「9月の終わりに順位が1日だけ圏外に落ちて、すぐ戻った。Googleがまた何か動かしたんでしょ?」そう思ってる? 違うかもしれない。動いたのは順位じゃなくて、ツールが受け取った検索結果のほうだった。そういう調査を、10月12日にSearch Engine Roundtableが伝えた。
前回の記事は、Googleがメールで数字を1個だけ教えてきた話だった。今日は逆向きの話をする。外から数字を取りに行った道具が、気づかないうちに違う数字を持たされていた。
断らない。そっくりの別物を渡す
順位計測ツールのNozzleが、調査を公開した。Search Engine RoundtableのBarry Schwartzは10月12日の記事で、同社のDerek Perkinsが今朝これを公開した、と書いている。Nozzleのページに入っている日付は10月10日で、データは10月9日までだ。
中身はこう。Nozzleが8月20日から10月9日までに集めた検索結果ページのうち、2750万件を調べた。49か国、パソコンとiPhoneとAndroid。9月13日以降、その8.0%が「すり替わって」いた。それより前の基準の期間(8月20日から9月9日)は0.17%。いちばんひどかった9月27日から29日は、全体のおよそ4分の1。10月1日以降も、1日あたりおよそ5%から11%で続いている。
順番も書いてある。9月13日、Googleへのリクエストが大量に失敗し始めた。2週間ほど、取れるページが減った。そして9月20日から、通ったリクエストに別物が混じり始めた。先に締め出して、そのあと、すり替えた。
Nozzleはこれに、混ぜものをされた検索結果、という意味の強い名前を付けている。私は「すり替え」と呼ぶ。理由はNozzleの説明がいちばん分かりやすい。Googleはリクエストを断っていない。完成したページを返している。ただし並んでいる結果が違って、ページのどこにもそう書いていない。断られたリクエストは、やり直せばいい。すり替えられたページは、本物として保存される。
実物が4組載っている。1組めは「white label local seo」という検索。10月4日の1ページめには、SEOの下請けを売る会社が並んでいた。3日後の10月7日、同じ検索の1ページめに出たのは、WordPressの開発ツール、ジャクソンホールのステーキハウス、郡の保健所の名簿、USA.gov。1ページめにいた9サイトは、9つとも、どのページにもいない。ページ送りは10ページから3ページに縮んだ。Nozzleの注釈は、Googleが「local」を文字どおりに読んだ、だ。
エラーは出ない。CAPTCHAも出ない。ページの型も同じ。1ページめのHTMLの重さは、720KBと728KB。見分けるものが、ページの中に無い。
「すり替わった」と判定したのは、Nozzleだ
ここは押さえておきたい。ページに印が無いなら、8.0%はどうやって数えたのか。
履歴からだ。Nozzleはまずキーワードごとに「いつもの顔ぶれ」を決めた。基準の期間に、そのキーワードの検索結果の60%以上で10位以内にいたサイトのこと。その顔ぶれの半分未満しかどのページにも出てこなくて、しかもあとで戻ってきたページを、すり替えと数えている。
つまりこれは、Googleが認めた数字じゃない。Nozzleが自分の客のために集めたデータから、Nozzleの物差しで数えた数字だ。本当に順位が1日だけ入れ替わって戻った場合も、この数え方には混じる。基準の期間の0.17%が、その混じりの目安になると私は読んだ。そこから8.0%まで跳ねたんだから、何かが起きたこと自体は疑いにくい。
8.0%がどこでも8.0%なわけでもない。Nozzle自身が書いている。9月30日から10月9日の同じ日々に、Googleへ届く経路の1つでは1%から7%、別の経路では9%から30%だった。国でも違う。米国8.5%、英国3.0%、オーストリア18.8%。日本は6.8%で、判定の対象になったのは13万1289件。
ただ、見ているのはNozzleだけじゃない。
同じく順位計測ツールのMorningscoreは10月8日、400万を超える検索を調べた報告を出した。9月24日の夜から、短く切られた結果が返り始めた。ふだん約50件取れるところが40件未満。山だった9月30日と10月1日は、検索のおよそ60%がそうだった。切られた結果では、前の上位10サイトのうち平均8つが消えていた。同社のツールは、それをほぼ6日間、本物の順位下落として記録していた。同じ時刻にふつうのブラウザで検索すると、結果は全部出た。人間は、たぶんこれを見ていない。
DemandSphereは10月7日、1日に集める検索結果のおよそ11%に影響が出ていると書いた。最終の数字だと思わないでほしい、と自分で断っている。SISTRIXも同じ日、一部の検索で、本物に見えるけど載っているサイトが違う結果が返ってくると書いた。いまは複数の確認を通った結果だけを公開していて、通らなければ取り直す。そのぶん更新は遅れる。その場で更新をかける機能は、9月から止めている。
4社とも、数え方が違う。だから数字どうしは比べられない。でも形は同じだ。9月の後半から、ツールに届く検索結果が、人間に届く検索結果と別のものになっている。
Nozzleの数字をあと3つ。追いかけている自分のサイトが、本来は10位以内の常連なのに10位以内から消えて見えた割合は、すり替わったページで58.6%。基準の期間は2.7%。すり替えの80%は1回きりで、77.9%は3日以内にいつもの顔ぶれが戻る。そして空いた枠には、RedditやFacebookが入りやすい。Redditが10位以内にいる割合は、すり替わったページで28.8%。同じキーワードのほかのページでは20.8%だった。
1つ、笑ってしまった数字がある。すり替わったページでは、オーガニックの結果は前回の顔ぶれの20.7%しか残らない。ところがショッピングの枠は92.2%残る。基準の期間は92.8%だから、ほぼそのまま。広告は83.7%で、基準の70.6%より多く残っている。金を払った人の欄だけは、すり替わったページの中でも、ちゃんといつもどおりだ。
狙いはたぶんAI。Googleは何も言っていない
なぜこんなことが起きているのか。
Nozzleは、AIの答えの材料にするために検索結果を大量に集める動きへの、Googleの対応だと書いている。順位計測ツールは同じやり方でページを集めるから、巻き込まれた、と。SISTRIXは、ChatGPTのような新しい競争相手が検索のインデックスに触りにくくすること、検索結果を中国などの公開型のAIモデルの学習に使わせないこと、がGoogleの主な狙いだと「考えている」と書いた。Schwartzも、狙いはSEOのツールじゃなくて、AIのボットとSerpApiだろうと見ている。
3者とも推測だ。Googleの説明は、私が読んだどの記事にも出てこない。海外SEO情報ブログの鈴木謙一さんも、今回の情報源にGoogle自身の説明は含まれていない、と書いている。
8月に私はGoogleがリンクから宛先を消した。順位表は静かに粗くなるで、検索結果のリンクが中継のアドレスに替わった話を書いた。あれは、順位表の値段が上がる、という話だった。Schwartzはいま、あの中継はツールにとって簡単なほうだった、と書いている。Perkinsが彼に話した今のGoogleのやり方は3本立て。住宅用の回線を束ねた大手の中継網をまとめて弾く。CAPTCHAを大幅に増やす。怪しいアクセスには間違ったデータを混ぜて返す。
8月は「高くなる」だった。今回は「間違う」だ。Schwartzがいちばん心配しているのも3本めで、ほとんどのツールはすぐには気づかず、問題なしと思い込むんじゃないか、と書いている。
じゃあ信じられるのはSearch Consoleだけ、となりそうなところに、もう1つ話がある。
Nozzleは見分け方として、Search Consoleを挙げている。ツールでサイトが消えて見えても、Search Consoleに表示とクリックが出ているなら、サイトには何も起きていない、と。そのSearch Consoleについて、10月12日にLily RayがXに投稿した。3つの検索語で、12か月の表示回数が数十万から数百万あるのに、クリックはほぼゼロ。その表示が3つとも、9月21日ごろに止まった。Googleの最近のスクレイピング対策と関係があるんだろうか、と本人は問いかけの形で書いている。鈴木さんは、ツールが人のふりをして投げていた検索が作っていた表示だった可能性が濃厚だ、と読んだ。
3つの検索語の、1人の観測だ。そのつもりで読む話だけど、もし当たっているなら、いちばん信じられるはずの数字にも、ずっと機械が混じっていたことになる。ボットが締め出されて、初めてそれが見えた。
今日の本音
8月に私は、順位表はGoogleが読ませてくれている間だけ存在する借り物だ、と書いた。今回分かったのは、貸しているほうは「返せ」と言わなくてもいい、ということだ。中身を入れ替えて、黙って渡せばいい。
断られたら気づける。そっくりの別物は、グラフに1日だけの谷として残る。9月の終わりにその谷を見て何かを直した人は、直す前のほうが合っていたのかもしれない。そしてGoogleが一言も説明していない以上、この8%が来月何%になるのかは、測っている会社にも分からない。
参考・引用記事
- Poisoned Google SERPs(Nozzle、2026年10月10日付)
- Third-Party Google Rank Tracking Struggling Now(Search Engine Roundtable、2026年10月12日)
- Google gave rank trackers truncated results for a week(Morningscore、2026年10月8日)
- Spurious data in Google SERPs(DemandSphere、2026年10月7日)
- Why Google ranking data collection is changing(SISTRIX、2026年10月7日)
- 順位チェックツールの数字がおかしい? Google が返す「ニセの検索結果」の影響(海外SEO情報ブログ、2026年10月13日)
- Lily RayのXへの投稿(2026年10月12日)
